最近読んだ論文の紹介です。
論文タイトル: Increased force and contact area in the lateral compartment may predispose to arthritis progression after balanced unicompartmental knee arthroplasty: A cadaveric comparison
出典: The Knee 56 (2025) 196–210
1. イントロダクション(背景と目的)
人工膝関節単顆置換術(UKA)は、全置換術(TKA)と比較して回復が早く機能も良好ですが、生涯再置換率はTKAの2〜3倍高いという課題があります 。その主な原因の一つとして、温存された対側(外側)コンパートメントへの変形性関節症の進行(15〜35%)が挙げられます 。
これまでTKAやUKAの内側コンパートメントに関するバイオメカニクス研究はありましたが、「バランスが取れた」とされるUKA術後に、温存された外側コンパートメントでどのような力学的変化が起きているかを詳細に調査した研究はありませんでした 。
本研究の目的は、従来法(マニュアル)とロボット支援(CORI)の2つの手法を用い、内側UKA後の膝において、内側(置換側)と外側(温存側)の接触圧・接触面積・力の配分を比較検討することです 。
2. 方法(Study Design)
- 対象: 新鮮凍結遺体(カダバー)の下肢標本16膝(軽度〜中等度の内側OAあり) 。
- グループ分け: ランダムに以下の2群に割り付け。
- 従来法群(8膝): 標準的なカッティングジグを使用 。
- ロボット支援群(8膝): CORIイメージガイドシステムを使用 。
- インプラント: 全例でSmith & Nephew社のJourney IIを使用 。
- 計測方法: Tekscan社の圧力センサー(FlexiForce)を、内側(インプラント下)と外側(大腿骨と本来の半月板の間)に設置 。
- 動作テスト: モーター制御により、膝関節を屈曲90度から完全伸展(0度)まで一定速度で伸展させながら、接触圧(Pressure)、接触面積(Area)、力(Force)を測定しました 。
3. 結果(Results)
測定の結果、従来法とロボット支援法の間でバイオメカニクス的な有意差は見られませんでした 。しかし、内側と外側のコンパートメント間では顕著な違いが明らかになりました。
- 接触圧 (Contact Pressure):
- 内側(置換側)が圧倒的に高い。 伸展0度において、内側は約1863 KPaに達したのに対し、外側は約734 KPaでした 。
- 内側の圧力は屈曲90度から伸展0度にかけて約4倍に急上昇しました 。
- 接触面積 (Contact Area):
- 外側(温存側)が常に広い。 全可動域において外側の接触面積は内側よりも有意に大きく、伸展時には外側約134 mm²に対し、内側は約44 mm²でした 。
- 力 (Force):
- 外側(温存側)により大きな力がかかっている。 全角度で外側にかかる荷重(Force)の方が大きく、伸展0度では外側97.84 Nに対し、内側83.01 Nでした 。
4. 考察(Discussion)
この研究の最も重要な発見は、術者が「バランスが取れている」と判断したUKAであっても、荷重配分の不均衡(Load Imbalance)が存在することです 。
- なぜ外側の力が大きいのか?
内側は半月板切除により接触面積が減少するため(点接触に近い)、高い「接触圧」が生じます。一方、外側は本来の半月板が残っているため「接触面積」が広く、結果として膝にかかる総荷重(力=圧力×面積)の多くを外側が負担していることが示されました 。 - 臨床的な意義
- 外側のリスク: 外側コンパートメントにかかる慢性的に高い「力(Force)」と「接触面積」の負荷は、UKA術後に外側の関節炎が進行するメカニズムを説明している可能性があります 。
- 内側のリスク: 内側の極端に高い「接触圧」は、インプラントのゆるみ(Aseptic loosening)のリスク因子となる。
- ロボット手術の影響
ロボット支援(CORI)は正確な骨切りとバランス調整が可能ですが、本研究では従来法と同じ荷重パターン(外側過重)を示しました。これは、現在のバランシングの目標値やインプラント設計自体が、本来の膝の力学を完全には再現できていない可能性を示唆しています 。
結論
UKA術後において、外側コンパートメントは内側よりも大きな「力」を受けており、これが長期的な外側関節炎の進行に関与している可能性があります。ロボット技術を用いてもこの傾向は変わらないため、将来的には荷重配分を最適化するための新たなバランシングアルゴリズムやインプラント設計の改良が求められます 。
感想
UKAに関するバイオメカの論文ですね。
自分はバイオメカやってないのですが、バイオメカのグループの先生方は実験方法が少し変わっているね、とコメントされてました。
UKAは自分も内側脛骨コンポーネントの沈み込みを経験したこともあり、うまくやればいい手術ですが、適応や手技が大切な印象です。

